1月21日、千葉県庁の近くにある千葉地方裁判所に傍聴に行ってきました。傍聴したのは、生活保護基準引き下げの違憲訴訟です。船橋生活と健康を守る会のみなさんと一緒に参加しました。
国は2013年に平均6.5%、最大10%の生活扶助基準の引き下げを決め、3回に分けて実行しました。史上最大の引き下げと言われます。「1日2食に減らした」「年1回、家族とディズニーランドに行くのが楽しみだったが、それもできなくなった」「希望が見えない。死にたくなる」など、生活保護の利用者の方々から困窮状況を訴える声が相次いでいます。この引き下げに対し、全国29の都道府県、1000人超の原告が違憲訴訟を提起しました。
現在7つの地方裁判所で判決が出されています。大阪地裁だけが「国の引き下げは違法」という判決を出し、6つの地裁は合法・合憲という判決です。しかし原告弁護団によると、6つのうち3つの判決で同じ誤字があったことが分かりました。福岡地裁、京都地裁、金沢地裁です。いずれの判決も、N H K受信料の「信」を「診」と誤って記載していること、前後の文章も似通っていることから、「訴え棄却の結論ありきで、自分の頭で考えずに判決文を写したのではないか」と見られています。三権分立が崩れる、空恐ろしい事態です。
1月30日付の「生活と健康を守る新聞」紙面で、東京都東大和市の元生活保護利用者である中高健郎さんが、このことを次のように批判されています。「この『コピペ判決』は、裁判官の独立性を定めた憲法76条3項に明らかに反し、不当なものです。その条文で『すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される』とあるからです。」 時の政権に忖度した判決文など、とんでもないということです。勉強になりました。
21日の千葉地裁では、次は6月10日という日程調整が行われたのみで、10分程度で終了しました。私は裁判の傍聴自体初めてでしたので、こんなに早く終わるのかと意外でした。判決が出るのは半年後くらいではないかと言われています。
裁判終了後の報告集会で、原告側の弁護団から現状が報告されました。「生活保護費の引き下げについて、国民感情に配慮して引き下げてもいいという判決が続いている。裁判所は死んでいる。同時に、憲法25条の『健康で文化的な生活』は国民の権利であり、国はそれを具体的に保障する義務があるし、それは予算の有無によって決められるものではないという朝日訴訟の判決文を思い出した」といったお話も。
その後、原告のみなさんからお話がありました。
「各地の裁判長は、今の生活保護費で本当に『健康で文化的な最低限度の生活』ができるのかということに向き合っていない。生活実態を言えるのは当事者だけであり、その役割を発揮し続けるつもりだ」
「元々生活扶助費は不足していたが、そこからさらに引き下げが行われている。その根拠にするため、物価偽装という最悪の統計不正が行われた。各地の判決文は大阪以外どこも似た雰囲気で、ひどいもの。新聞に投書したり、YouTubeでこの酷さを訴えている。みんなで騒ぐしかない」
「いつまで苦しい生活を強いられるのかと、そればかり考えている。なんとか巻き返したい。三権分立を守らない裁判官が多い。全国のみなさんと一緒に頑張っていきたい」
また松戸市から来られた社会福祉士の男性から、全国生活と健康を守る会連合会による厚生労働省への申し入れの経験が紹介されました。「厚生労働省は(社会保障を充実させない理由として)財政難を持ち出すが、全部財政難で片付けられてはたまらない」と、さらに運動を進める旨が語られました。
違憲裁判の現場を拝見するのは初めてでしたが、貴重な経験になりました。それにしてもコピペの判決文が続いているというのは、あまりにも非人道的な話です。生活保護を利用されている方々の生活実態を、より多くのみなさんに知っていただきたいと思います。
コメント