23日、市議会総務委員会の視察で札幌市へ行きました。札幌市役所の皆さんから公文書管理制度の説明を受けたあと、公文書館を見学しました。市民の「知る権利」確保の具体化がされている姿を見て、勉強になりました。
公文書とは、国や地方公共団体の職員が職務上作成した書類です。2018年に財務省が森友問題に関わる公文書の改竄をしていたことが朝日新聞のスクープで明らかになったり、自衛隊のイラク派遣の報告書(日報)の隠蔽が明らかになったりと、この間国で公文書に関わる嘘とごまかしが横行しています。
札幌市では公文書や私文書、刊行物など、市民にとって重要な文書(「市政の重要事項に関わり、将来にわたって市の活動または歴史を検証する上で重要な資料となる公文書」)を特定重要公文書とし、公文書館に保存しています。またインターネットでいつでも誰でも、どんな題名の簿冊が公文書館にあるのかが検索できます。
札幌市では1976年に市史の編纂のために教育委員会で文化資料室を設置していました。その後2003年に市民から、市が保有する図書・資料などを収集・保管・公開する施設を作って欲しいという陳情が市議会に出され、全会一致で採択されたこと、市長の思い、2007年施行の札幌市自治基本条例、2011年施行の公文書管理法(地方自治体における文書管理の努力義務が入った)が、2012年の公文書管理条例制定、2013年の公文書館開館へと後押しになったと言います。
船橋市にも永久保存しなければならない書類はありますが、市役所の地下書庫などに保管されていて、一般公開はされていません。また文書を廃棄するか永久保存するかの判断は船橋市が行っていますが、札幌市では外部機関の公文書管理審議会が最終的に判断します。公文書管理審議会は学識経験者など市長が指名した委員で構成され、定数は7人、任期は2年です。廃棄に関する調査や審議、意見の他、黒塗りになっている特定重要公文書の審査、公文書管理に関する重要事項についての提言が行えます。
最近では年間8000件程度の書類の破棄について判断が任され、全部破棄となったそうです。載っているのはタイトルだけであるにも関わらず、分厚い書類でした。
いろんな自治体の歴史が書かれた書物が整理されています。
館長さんです
公文書館は館長と係長が1名ずつ、担当職員が3名、非常勤職員6名、臨時職員1名という組織体制で運営されています。旧豊水小学校を利用していて、鉄筋コンクリート造、地下1階、地上3階建てです。
高温や高湿度は紙の劣化を早めるため空調システム整備が肝要ですが、地域の特性で低コストに抑えられています。小学校の改修工事費があるため初年度(2012年度)の決算は2億8732万円でしたが、2018年度決算は3577万円でした。大体毎年3500万円程度です。
2018年度の年間来館者は2768人、閲覧室利用は762人、特定重要公文書の申請は88件、閲覧は205点、複写は34点、レファレンスは371件です。多くはないと言いますが、情報公開が進んでいることは誇れることだと思います。
書庫です
大正15年度(1926年度)の札幌市予算書も。原本ではなく複製です。
また札幌市では政策会議も議事録が作成されていて、住民が情報公開請求をすれば入手できると言います。誰がなんの発言をし、市長がどんな反応をしたかも書いてほしいと言ってあるとのこと。船橋市では概要はインターネットで公開されていますが、議事録は作られていません。議会でこれを質問したときに企画財政部長が「自由闊達な議論の場なので作らない」と答えましたが、公文書管理法では現在と将来の国民への説明責任を果たすため、行政機関が「経緯も含めた意思決定に至る過程」を合理的に跡付け、または検証できるように文書を作成することを義務付けています。船橋市も札幌市に学んで頂きたいと思います。
「公文書館があって良かったですか」と最後に館長にお聞きしたところ、良かったと思う、ここが無ければ見られなかった文書もあるとのことでした。
インターネットでの検索画面。閲覧室にあります
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