不安や疑問の声が相次いだ、海老川上流地区開発による水害リスクに関する住民説明会

まちづくり

船橋市は8月19〜21日の日程で、海老川上流地区での区画整理事業が、海老川流域の治水に与える影響(=主に下流域で水害が起きるかどうか)のシミュレーションを説明する会を開きました。東京新聞など複数の報道機関が報じています。

船橋・土地区画整理事業で説明会 市が洪水浸水を解析 おおむね減少も一部で増加(東京新聞 8月23日付)

 

私は20日の午前の部に参加しました。会場で船橋市が配った資料は、18日の市議会建設委員会で出されたものと同じでした。

▼建設委員会に船橋市が出した、シミュレーションの説明資料

20220818【都市計画部】建設委員会資料 水害シミュレーション結果のサムネイル

この回の説明会には27人ほどの方々が参加し、千葉テレビが撮影をしていました。また船橋市だけではなく、千葉県の職員も出席しました。

質疑応答時、参加者のみなさんから出された質問は以下の通りです。

【シミュレーションの結果について】

  • 事業完了時の、区画整理地の外における流域での土地利用の変化(人口増など)も反映されているのか。
  • 開発により水害が軽減するという結果だが、信じられない。雨の降り方を平均的にしてるからではないか。
  • 最近の線状降水帯で、1時間あたり150ミリの雨も降る。なぜ時間50ミリに固執するのか。
  • 元のデータが古いのではないか。私たちの情報公開請求の結果では、平成22〜27年だった。
  • 満潮時と平均潮位時とがあるというが、海老川の水位はそれぞれどうなっているのか。
  • シミュレーションは民間委託ではなく、市役所自身で行ってほしい。
  • コンクリートの堤防は破堤しないというが、耐用年数はどうなっているのか。
  • 水害が軽減されるとは、仰天の結果だ。元のデータを情報公開し、第三者がみて妥当というものにしてほしい。
  • 暫定掘削について。海老川が溢れないと機能しない調節池ではないか。

【海老川調節池について】

  • 地下水が多くて、掘ると水位が上がってくるので施工が困難と聞いている。本当に完成できるのか。
  • 暫定掘削はいつ終わるのか。

【海老川水門などについて】

  • 開閉の基準を教えてほしい。
  • 川が溢れそうになったらポンプで排水するというが、停電になったらどうするのか。

【開発について】

  • 「人口が減少するから行革が必要」と市長は言った。そんな時代に、なぜ開発するのか。
  • 市場に住んでいるが、雨が降ればすぐに水が出るところだ。南船橋の開発では、すぐに雨が染み込む道路にすると聞いたが、ここの開発はどうやっているのか。
  • 海老川にはカワセミがいる、希少種だ。動植物に関係なく開発するのか。(市「環境アセスメントを行なった。植物は移植中」と回答)
  • 開発後に下流域で水害が起きたら、誰が損失補償をするのか。誰に損賠賠償を請求すればいいのか。
  • 昨日の都内での都市計画の学習会で、この開発はひどい事例として紹介された。骨抜きだと。議員は誰も来ていなかったと思うが、大きな事件になってきている。地権者の方はどう思っているのか。
  • 盛土の搬入において、高い単価で持って来られた時、船橋市は見抜けるのか。
  • なぜ、わざわざ地盤の弱いところに造るのか。

【住民説明会について】

  • 組合にも参加してほしい。
  • 今日の会で、みなさん納得されたと思うのか。非常に無責任だ。

【その他】

  • 国から来た副市長と建設局長が窓口になっていると思う。河川についてよく勉強してほしい。

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冒頭の東京新聞の報道にある通り、シミュレーションではおおむね浸水深が減少し、区画整理事業地の周辺では浸水深が増加するところもあります。私が建設委員会で「増加する地域に住宅などはあるか」と船橋市に尋ねたところ、あるとのことです。詳細を調査するよう求めました。

今回のシミュレーションは、①海老川調節池の暫定整備(広さ7ヘクタール、深さ50センチメートル、貯水容量35,000立方メートル)、②海老川下流部の河床掘削、この2件を行うことも計算に入っています。これらは千葉県の事業ですが、あいにく実施が確約されたものではありません。確約されていないにも関わらず、シミュレーションの前提として入っているため、純粋な「区画整理事業が治水に及ぼす影響」は、このシミュレーションから読み取ることができません。

またシミュレーションは雨の規模によって3パターンありますが、うち2つは満潮時のシミュレーションではありません。「想定最大規模(確率1000分の1)」の降雨のものは満潮時ですが、「計画規模(確率50分の1)」と「高頻度(確率10分の1)」の降雨のものでは平均潮位時が採用されています。船橋市はこの2つについて、条件を満潮時に変えてシミュレーションをやり直すつもりはないとしています。

市はこれで住民への説明は一通り行ったとして、8月から区画整理組合が工事に入ることを容認しています。

しかし海老川下流域は過去にも流域の開発で水害に見舞われたことがある地域で、区画整理予定地は天然の遊水地です。千葉県の都市計画マスタープランでも、海老川上流部の開発は水害を起こしかねず、加えて「下流の既成市街地への影響は著しいものがある」と心配されています。

▼千葉県の「船橋都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」より抜粋(全体資料はこちら

完成すれば貯水容量55万立方メートルとなるはずの海老川調節池は、用地買収が未完了で、完成時期のめどは立っていません。難工事のため着手したとしても完成まで何十年もかかると見られ、そもそも本当に完成できるのかさえ千葉県は明言できていません。そんな状況で、海老川上流地区の開発を進めるのは危ういことではないでしょうか。

また、区画整理予定地は軟弱地盤です。そこで大規模開発をし、市立医療センターを移転するという計画です。「軟弱地盤のため地震は強震動となる。浸水想定区域でもあり、災害時に医療センターが機能しない恐れがある。周辺には安全な台地が存在する。移転先を変更すべきだ」と、識者の方から指摘されています。

日本共産党はこの間、計画の中止、見直しを求めています。

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